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育成年代における競技会ガイドライン策定および主要国際大会日本代表選手選考要項、日本選手権大会参加資格について(メディアブリーフィングレポート 2025.12.17)

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日本陸連は12月17日、第106回理事会終了後に、東京都内でメディアを対象としたブリーフィングを開き、同理事会において協議・承認された内容のうち、①育成年代における競技会ガイドライン策定、②2026年度主要国際大会日本代表選手選考要項、③第110回日本選手権大会参加資格の3つについて、説明および情報の共有を行いました。 ここでは、特に、育成年代における競技会ガイドライン策定に関する話題を中心に、メディアブリーフィングで説明された事柄をご報告します。

この日のメディアブリーフィングは、同日午後より行われていた第106回理事会が終了してすぐに行われました。最初に報告されたのが、「育成年代における競技会ガイドライン策定」に関する話題です。本件は、2025年3月の理事会で策定することが決議されて以降、2025年度中の策定を目指した準備を進めることと並行して、関係各所に向けた必要性・重要性の周知・啓蒙や、ガイドラインに則った競技会開催の実現、そのなかでも「待ったなし」の状況になっている暑熱対策について、具体的な働きかけが行われてきました。メディアに向けても、4月の段階で方針の概要を示したのちに、8月22日には、本件に関するメディアブリーフィングを開催。策定に至った経緯や解決すべき課題、今後の方向性について説明する機会を設けています(https://www.jaaf.or.jp/news/article/22896/)。 開会に当たって登壇した田﨑博道専務理事は、本件について、まず「先ほど終わった理事会で、承認を得た」と述べ、「8月22日のメディアブリーフィングでは、山崎一彦強化委員長が口頭で説明したが、今回の手続きを経て(文書として)正式に公開できることとなった」と報告。「前回のメディアブリーフィングでは“叩かれ台”という言葉を使ったが、その後、十分に皆さんに叩いていただき、必要な要素が加わっている。ぜひ、説明を聞いていただきたい」と呼びかけ、冒頭の挨拶に代えました。

「育成年代における競技会ガイドライン」の解説

理事会において承認された「育成年代における競技会ガイドライン」については、オンラインでの参加となった山崎強化委員長が説明を行いました。「暑熱の問題、部活動の地域展開などをはじめとして、スポーツを巡る社会の状況がさまざまな面で大きく変わってきている。我々も、その変化に応じて変えていかなければならないと、かねてからたくさんの問題意識を持っていたが、まだまだそれらを実行できていない」と山崎委員長。本ガイドラインが、これら諸問題の改善に向けて、より具体的なアクションをとっていくべく考えられたものであることを改めて示し、以下、公表された本文に沿って、解説を進めていきました。

育成年代における競技会ガイドラインはこちら https://www.jaaf.or.jp/pdf/about/guidelines/youth_competition.pdf

1. 趣旨 本ガイドラインは、「競技者育成指針」に基づき、育成年代における競技者の健全な成長を促し、安全で公正かつ多様な競技環境を提供することを目的とする。特に競技会においては、自己の可能性への挑戦や人間性の涵養を重視しながら、競技負荷の適正化と質の高い競技機会の創出を両立させることによって、「一人でも多くの人が陸上競技を楽しみ、そして関わり続けるために」という長期的視点に立った競技者の成長と陸上競技界全体の持続的発展を支援する。 山崎: 一番の骨子となっているのは、日本陸連がミッションとして掲げている「国際競技力の向上」と「ウェルネス陸上の実現」。そのなかの「競技会開催のガイドライン」として、競技会の開催に言及し、そこから派生するさまざまな観点を示すものである。内容は、本連盟がすでに出している「競技者育成指針」(https://www.jaaf.or.jp/development/model/)に基づいており、育成年代における競技者の健全な成長を促し、安全で公正かつ多様な競技環境を提供することが目的。また、「一人でも多くの人が陸上競技を楽しみ、そして関わり続けるために」という長期的視点に立っているが、これは、オリンピックで金メダルを獲得するような選手、裾野にいる子どもたちや陸上競技にかかわる人たち含めて、すべてがつながっているという考えである。

2.競技会カレンダーの整備 山崎: 海外で実施されている例と比較しても、日本では育成年代の競技会数が多いところが、かねてから大きな懸念事項となっていた。その課題を踏まえ、以下の点に配慮した競技会カレンダーの整備を進めていく。

2.1 健康・安全への配慮 ・ヒトの発汗機能は思春期辺りまで未発達であり、高い意欲や競争意識による無理が体温上昇のリスク要因となることから、暑熱環境下での競技開催については、健康と競技力向上の両面から慎重に判断する。 山崎: 前回のメディアブリーフィング等でも説明した暑熱に関する問題について、「そもそも、なぜこのような暑熱対策をとっていくか」の理由を、ここに示している。特に、育成年代では、熱中症が心身に与えるダメージは非常に大きく、しかも長く続き、競技を断念せざるを得ない状態に陥ることや、断念に至らなくてもパフォーマンスに大きな低下が生じることがわかっている。それだけに、暑熱環境下で「負けられない戦い」が続くと、高い意欲を持っている選手たちから、そうした後遺症が残る危険にさらされるということである。 また、その競技に対して未成熟な選手、十分なトレーニングができていない選手たちにとっては、そうした無理自体が体温上昇のリスク要因となり、熱中症になる割合が大きくなることもわかっている。我々としても、こうした点を踏まえて、さまざまな対策を提示し、熱中症の予防に取り組んでいるが、残念ながら、その割合は小さくなっていない。ここで示している「慎重に判断する」という点は、特に育成年代で重要になってくることを、関わっている人々全員が十分に認識しておく必要がある。

・猛暑日となる可能性が極めて高い時期(特に 7-8 月)の競技会開催を原則回避する。例外として、冷涼地域・室内施設・早朝・夜間開催等、安全対策を十分に講じた場合に限り実施可とする。 ・WBGT(黒球湿球温度)31 度以上となる暑熱環境下では、競技の中止・中断等の安全措置を講じる。 山崎: 「WBGT(黒球湿球温度)31 度以上となる暑熱環境下では、競技の中止・中断等の安全措置を講じる」ことは、すでに公表し、2025年度の本連盟主催大会は、6月の段階で明示した方針に則って競技会を実施した( https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202506/19_102652.pdf )。 ここでは、猛暑日(最高気温が35℃以上の日)となる可能性が極めて高い7~8月は、競技会の開催を原則回避することを示した。例外として、冷涼地域や室内施設の開催、早朝あるいは夜間の開催など、安全対策を十分に講じた場合に限り実施を可としているが、これは例外中の例外というところがあるため、実質は、7~8月には競技会を行わないようにすることが安全であるという認識を持っている。

2.2 競技機会の均等化 ・年間を通じて、あらゆる競技レベルの選手たちが公平に競技機会を得られるよう、過密日程を避け、試合数の適正化・均一化を図る。 ・全国大会の意義や在り方を見直すとともに、地域大会の意義や活性化、および両者の連携強化を図る。 ・年齢や能力に応じた段階的な競技機会を設けるなど、競技力の拮抗した競技者同士が競争を楽しめる環境を整備する。 山崎: 競技会の過多、勝ち抜き方式の実施によって、いわゆる競技力の高い人たちの競技会数が多くなっている。シニア年代になってからのことや、競技会数とパフォーマンスの兼ね合いを考えると、できる限り適正化を図り、過度に競技会等へ出場することがないようにしていかなければならない。 また、育成年代では、「たくさんの人たちが参加する」というところに重点を置いていきたいと考えている。全国大会の意義や在り方を見直すと同時に、(多数の参加が可能となる)地域大会の意義を再考し、活性化を図りたい。例えば、年齢や能力に応じた段階的な競技機会など、競技力の拮抗した者同士が競争を楽しめるような環境の整備を目指していくことを考えている。

3.競技会の形式および運営 3.1 競技会の設定 ・育成年代の特性を考慮し、オリンピック種目のみに限定せず、多様かつ適切な種目を柔軟に設定する。 山崎: オリンピック種目をマスターイベントとするのではなく、育成の段階やトレーニングの状況に応じて、距離や重さ、高さを変えていくということ。これらについては、すでに「育成戦略種目」として、300mハードルや、U20規格で行う110mハードル(110mジュニアハードル)を実施している。110mハードルについては、シニアでは世界大会入賞者が出るなどの活況が続いており、また、育成年代においても記録の向上が見られるなどの効果が出ている。このように、戦略を持って考えていくことを目指す。また、ここでいう戦略とは、距離や重さ、高さを「今、決めて固定して実施していく」ものではなく、社会状況や競技人口、さらには競技レベル等に応じて考えていくというものである。

・出場種目数の制限や試合数、ラウンド数、試技数の制限およびラウンド間の休息時間の適正化により、選手への過度な負担を防止する。 山崎: 高い目的意識を持っていれば、こなせることかもしれないが、こうした厳しさが、のちに違う厳しさになってしまう可能性があるということを認識しておきたい。ここで厳しさを課してしまうと、オーバートレーニング症候群に陥る可能性があるし、心身ともにバーンアウトする恐れもある。育成年代の選手への過度な負担を防止したい。

・1日の競技時間の短縮、拘束時間の適正化および大会期間の短縮により、学業や生活との両立を支援する。 山崎: 陸上競技は、練習時間を短くしても、育成年代ではできる競技だと考えている。これができれば、文武両道で取り組むことや、育成段階にふさわしい余暇の過ごし方や見聞を広げる経験をすることも可能となる。今の社会状況に応じて、競技も、学業を含めた日常生活も、両立していけるような取り組み方を支援したい。「たくさんの時間、その競技に取り組めばよい」「たくさんの競技会に出ればよい」という考えを払拭したい。

・各都道府県や各地域での開催形式や運営方法の均一化を図り、全国各地で同質の競技会参加を保証するとともに、高い競技レベルの競技会への挑戦の際も、スムーズに対応できる仕組みを構築する。 山崎: これは、先般のブリーフィングでも説明したように、競技会の開催は、「国際基準に沿って実施する」ことが必要で、それが育成年代でも求められるという観点によるもの。独自のスタイルではなく、世界基準に応じて実施していくことが、その後、国外で戦ったり、オリンピックや世界選手権で成果を出したりすることにつながるという考え方である。

3.2 競技運営の簡素化 ・一部の長距離種目、混成種目およびリレー種目の別開催や、総合得点(プレーシングポイント)の運用見直しなどにより、競技会運営の負担軽減と効率化を図る。 ・競技会参加者全員へのルール説明を徹底し、透明性ある競技運営を推進する。 ・公平性や安全性を担保しながら、より簡易な競技運営においても公認記録となる仕組みについて検討する。 山崎: ここは、育成年代の競技会を実施する運営側の立場を考えての内容である。競技会では、運営する方々にもかなりの負担を強いている。競技日程および時間を短縮し、競技会運営の負担を少しでも軽減し、効率的に進めていくことを目指したい。同時に総合得点を競う形は、一定の選手が何種目も出場することにつながり、無意識のうちに強制となっている可能性がある。そうした側面でも過度にならない配慮が必要であるため、一部の種目を別開催したり、総合得点の運用を見直したりすることで、適正化・効率化を進めていきたい。 また、ルール説明の徹底に当たっては、やはり世界基準のルールの周知を進めていくことが前提となる。そして、これらの点を踏まえて、公平性や安全性も担保したうえで、より簡易な競技運営においても記録が公認される仕組みを検討していく。

4.育成に資する競技環境の整備 4.1 発育発達に応じた競技環境 ・育成年代のステージにおいて多様な種目経験を奨励し、早期専門化を回避する。 ・記録への挑戦を通した達成感や競技・競争の楽しさを重視し、競技者の心理的負担を軽減する。 ・競技カレンダーの見直しにより、早期のドロップアウトを防ぎ、継続的な競技参加を促す。 ・タレントプールの拡充とトランスファーを意図した競技会環境の整備や育成年代の強化対象選手等の選抜の仕組みを構築する。 山崎: 競技会回数が多ければ、競技者は自身の成熟度をどんどん早めることになるとともに、同じ種目をずっと行う早期専門化の状態を招く。育成年代にさまざまな種目を経験したほうが、インターナショナルレベルに達する可能性が高まることは、近年では、多くのエビデンスによって示されている。また、早い年代から同じことを同じフォームで繰り返していれば、当然、オーバーユースとなる。それを防ぐためにも、多様な種目の経験は大切。陸上競技では、走る・跳ぶ・投げる・歩くと多様な種目があるので、育成年代でさまざまな種目に取り組んだり、類似した種目でトランスファーしたりしていくことも期待して、発育発達に応じた競技環境の整備に取り組んでいく。

4.2 コーチ(指導者)の質の向上 ・育成年代の指導者(コーチ資格保有者)には、発育発達・コーチング・セーフガーディング等に関する研修の受講を義務付ける。 ・審判員には、競技規則の正確な理解に加え、セーフガーディングとインテグリティ(公正性・透明性)に関する研修を定期的に実施する。 ・すべての指導者・審判員が、フェアプレー・倫理観・リスペクトの模範となる行動を実践する。 山崎: 日本陸連では、指導者養成委員会において指導者資格制度を整備し、指導者のコーチ資格取得を推進しているが、コーチ資格所有者の数はまだまだ少ない。指導するということは、ライセンスを持っていることが前提。無免許で指導を行うのではなく、まずは最低限コーチの資格を持っていることを徹底させたい。有資格者に対しては、今後、発育発達・コーチング・セーフガーディング(すべての人々が、身体的・精神的な虐待、ハラスメント、搾取、暴力などから守られ、心身ともに安全で安心できる環境をつくることや、そのための活動)等に関する研修を義務づけることを進めていくが、そもそもコーチ資格を持っていない方々に、まずは資格の保有者になっていただくことが必要と考えている。 また、「審判養成」という観点から、審判員に対しても、競技規則の正確な理解に加えて、セーフガーディングとインテグリティ(公正性・透明性)に関する研修を定期的に実施していくことを計画している。そして、これらの取り組みにより、すべての指導者・審判員が、フェアプレー・倫理観・リスペクトの模範となる行動を実践できるようにしていきたい。

5.競技者の安全管理 ・競技者の健康管理を徹底し、過度な負荷をかけないために、身体的安全のみならず、心理的安全にも配慮した競技環境を整備し、後遺症など長期的な健康影響を未然に防ぐよう努める。 ・熱中症予防に関するガイドライン等の遵守と、医療体制の強化を徹底し、競技環境の安全確保を図る。 ・スポーツ医・科学的知見を活用し、トレーニング負荷と試合配置を最適化(ピリオダイゼーション)することにより、質の高い競技会およびトレーニング経験・学習を保障し、安全で持続的な競技活動を推進する。 ・競技会場には、セーフガーディング担当者を配置し、ハラスメント・不正行為への迅速な対応を図る。 山崎: これは2.1でも説明した通りである。日本スポーツ協会が出している「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」など、熱中症予防に関するガイドラインの遵守と医療体制の強化を徹底するなど、競技者に過度な負担をかけないために、身体的だけでなく心理的にも配慮した環境の整備を目指す。また、スポーツ医・科学の知見を活用し、トレーニング負荷と試合配置を最適化することによって、安全で、持続的な競技活動を推進したい。